第一章:10年引きずる失恋

頬が赤く染まる呪い

 

私が復縁をテーマに自己紹介する上で、

外せない失恋が2つあります。

 

まず、私の一度目の大失恋。

 

それは今から10年以上も前のことです。

 

当時10代後半だった私は名前も知らない

見知らぬ女性に一瞬で恋に落ちました。

 

「こ、この胸の高鳴りはナンナンダァァアア!」

 

テレビでしか見たことのない女優や

当時流行っていたアイドルも含め、

私のそれまでの人生の中でダントツで

ナンバーワンの女性です。

 

「俺はこの人に一目ぼれするために

生まれてきたんじゃないか?」

 

真剣にそう考え過ぎて白目を剥くほど、

その女性を見た瞬間、雷に打たれたのです。

 

運よく友人の知り合いだということが分かり、

私はなんとかその女性と友達になることができました。

 

しかし、当時の私は自分に自信が

まったくありませんでした。

 

それだけならまだよかったのですが、

女性と話すだけでほっぺたが赤くなってしまう

呪いにかかってたのです。

 

一言で言えば『赤面症』です。

 

好きな人を目の前にすると顔が熱くなってきて、

 

「もしかして俺のほっぺた赤くなってないか?」

 

「マズイ!好きだってばれちまう!」

 

そう思えば思うほど恥ずかしくなって

余計にほっぺたは熱くなります。

 

そんな状態ですから、その女性と

会っても挨拶をするのが精いっぱいで

いつもやりとりはメールだけでした。

 

でもそれだけで満足でした。

 

というのも、

付き合えるだなんて到底思えないほど

私にとって、その女性は高嶺の花だったからです。

 

この女性、Aさんとの失恋が、

私の一度目の大失恋の物語です。

 

彼女と電話できたら、もう死んでもいいぜ!

 

あなたは”スラムダンク”という

漫画を読んだことがありますか?

 

スラムダンクの序盤にはこんなシーンがあります。

 

主人公の桜木花道は高校に入学して早々、

赤木春子というヒロインに一目ぼれするのですが、

 

花道は春子のことを考えながら、

満面の笑みでこんな妄想をします。

 

「春子さん可愛いな~、

彼女と登下校できたら死んでもいいぜ!」

 

私はまさにその状態でした。

 

「Aさんと登下校・・・そんなの恐れ多いぜ!

 

でも、もしもAさんと電話とかできたら、

幸せ過ぎて死んでしまうんじゃなかろうか」

 

我ながら「何て純朴な男子なんだ」と思いますが、

それくらいAさんが遠い存在だったのです。

 

本当はもっと話したいことあるのに、

どうしてもその先に進む勇気がない・・・

 

その時Aさんには恋人がいたのですが、

私はそんなことも知らずに、

 

「メールの返事が返ってくるかなぁ・・・

返ってこなかったらどうしよう・・・」

 

いつもそうドキドキしながら、

私たちは交流を深めました。

 

そのやり取りの中で一番困ったのが、

恋愛の話題です。

 

「いつでも恋愛の相談乗るよ~!」

とAさんに言われても、

 

(いや、俺が好きなのはアナタなんですけど?)

 

という感じで名前を伏せたまま

恋愛相談することもありました。

 

おかげでどんな男性がタイプか?など

Aさんの恋愛観はリサーチは出来ました。

 

しかし、リサーチ出来たところで

私には行動する度胸がありません。

 

基本的に私は誰かと付き合うとき、

相手から告白するように仕向けることが

多かったのですが、

 

理想像ともいえるAさんを目の前にすると、

ほっぺの赤いただの静かなガキに

一瞬で戻ってしまうのです。

 

好きな人に好きな人の事を相談する・・・

 

そんな奇妙な関係を続けながら、

ただただ時間は過ぎていきました。

 

血走った眼で舐めまわされたJK

 

そうこうしているうちにAさんは

卒業が近づいてきます。

 

「卒業してしまう・・・」

 

という焦りはありました。

 

それと同時に、

 

「もし今以上に関係が進展しても、

もうすぐAさんとは会えなくなってしまうんだ」

 

そう考えると、それだけで切なくなります。

 

Aさんのことは好きだけど、

今告白して関係が気まずくなるのは

どうしても避けたいと考えた私は、

ある決意をしました。

 

「数年後、立派な大人の男になって告白しよう」

 

私はそれまでほぼ毎日のようにしていた

メールを辞め、Aさんがいなくなった日の

寂しさに保険をかけました。

 

そして迎えた卒業式。

 

私は前日の夜から親友宅で

 

「もう会えなくなっちまうよ~!」

「どうしたらいいんだ~!」

「好きだ~」

 

と徹夜で親友に嘆いていたため、

肝心の卒業式は思いっきり寝不足でした。

 

Aさんの最後の制服姿を寝不足で

血走った眼に焼き付けた私は、

 

仲の良かった男性の先輩宅で遊んだあと

寂しさを引きずりながら自宅に帰り、

ベッドに入ると泥のように眠りました。

 

しばらくAさんに会えないことに耐えるには、

とりあえずその夜は寝るしかなかったのです。

 

その間、携帯が何度か鳴っていましたが、

そのたびに無視して眠りにつきました。

 

それがAさんからの電話とメールだったとも

気づかずに・・・

 

強風吹き荒れる極寒の海辺で

幸せすぎて死ぬ

 

目覚めた私は少し落ち着きを取り戻し、

現実逃避のためにテレビゲームの

スイッチを入れました。

 

当時の私の部屋のテレビは窓の近くにあり、

その窓にはいつも携帯電話を置いていました。

 

私の地元は田舎だったため、当時は

 

・電波の良い海辺に行くか、

・窓辺に置くか(メールしか無理)

 

という状況だったからです。

 

ゲームが起動されたテレビを見た瞬間、

窓辺に置いた、不在着信のライトが点滅する

携帯が視界に飛び込んできました。

 

「あぁ、そういえば何回か携帯鳴ってたな」

 

眠い目をこすりながら携帯を開くと

知らない番号からの着信が2回。

 

「知らない番号・・・なんかこえ~」

 

その他に何通かメールが来ていました。

 

(こ、これは!)

 

送り主はAさんでした。

 

着信とメール受信の履歴を見ると

Aさんが連絡をくれたのは夜の11時頃。

 

しかし私が涙で枕を濡らし爆睡した挙句、

目が覚めた時刻は夜中の2時半です。

 

「こんな時に寝るなんて、

俺はなんてバカなやつだ!」

 

ダメもとでAさんにメールをすると、

さきほどの知らない番号から

すぐさま電話がかかってきました。

 

「なんで俺の電話番号を知っているんだ?」

 

普段ほっぺを赤くしながらあいさつする以外、

本当にメールだけのつながりでしたので

不思議に思いましたが、それどころでは

ありませんでした。

 

千載一遇のチャンスなのに、

いかんせん電波が悪いので、

着信があっても通話できないのです。

 

「これは海に行くしかねえずら!」

 

私はすぐさまAさんに

「5分後にかけなおします」

とメールを送り、

 

まだ雪の残る3月の凍った夜道を

自転車で爆走しました。

 

「電話出来るなんて夢か?」

 

「いやこの耳がちぎれそうな寒さは

夢じゃないぞ!やったぜ俺!」

 

逸る気持ちを抑えながら、そして

カッチカチに凍った路面で

2回ほど盛大に横転しながらも、

 

途中の自販機であったか~いレモンティーと

煙草を買い電話の出来る海辺につきました。

 

そこは強風が吹き荒れる極寒の世界でした。

 

数か月前までは、

「電話とかできたら幸せだろうな~」

と照れて顔が赤くなっていた私は、

 

「夢ってこんな感じで突然叶うのか?」

と戸惑いながらAさんに電話をかけました。

 

記念すべき最初の電話は確かこんな感じでした。

 

私「すみません遅くなって!」

 

A「こちらこそ夜遅くごめんね?寝てた?」

 

私「いえ!早寝して目が覚めたんです!」

 

A「今、家にいるの?」

 

私「家だと電波が悪いので海辺に来ました!」

 

A「え、寒いでしょ?ごめんね」

 

私「大丈夫です!なんかあったんですか?」

 

A「今友達とパーティーしてるのね」

 

私「え~!いいなぁ…

(俺も混ざりてぇ、いや…

参加したら緊張しすぎて死ぬな)」

 

A「それでね・・・全部聞いたよ」

 

私「なにをですか?」

 

A「○○(私)が好きな人の事(笑)」

 

私(マジかよ・・・最悪だ・・・)

 

私は一瞬で頭が真っ白になりました。

 

というのも、私はこれまでに

Aさんとのやりとりの中で、

 

・片思いの人がいること

・それはAさんが知っている人だということ

(本人だから当然ですね)

・だからこそAさんには言いたくないということ

・その人がどれだけ好きかということ

 

こんなことを聞かれるたびに

メールで答えていたからです。

 

機密情報をバラした犯人はキサマか!

 

私はAさんに真実を伝えたのが、

Kさんだとすぐにわかりました。

 

KさんはAさんの友人であり、

この人にはAさんのことでかなり

相談に乗ってもらっていたからです。

 

私「すいません、今その場にKさんいますか?」

 

A「え、いるけど代わろっか?」

 

私「代わってください!」

 

食い気味でそう告げた私は、

電話を変わったKさんにみんなのもとから

離れてもらい、問い詰めました。

 

私「ちょっと!どうしてバラすんですか!」

 

K「アハハ!」

 

私「(アハハじゃねえっつうの!)」

 

K「ごめん(笑)だってAから

しつこく聞かれたんだもん」

 

私「俺には壮大なプランがあったのに!

うまくごまかしてくださいよ!」

 

K「うるさい!Aに代わるよ」

 

私は「ぎゃ、逆ギレだぜ(@_@;)」と思いつつ、

 

私「なんかすみません・・・

Kさんが言ったのは事実です・・・

それとKさんに今までのお礼を・・・」

 

A「なんで謝るの?(笑)

明日も電話していい?」

 

私「え?(´・ω・)」

 

A「何時なら大丈夫なの?」

 

私「いつでも!」

 

(なんか・・・恋の予感がするぞ)

 

私は電話を切ると腹の底から湧き上がる

 

「ふんぎゅ~イイイイイイイイイ(# ゚Д゚)」

 

という声にならない声と、

ほとばしる謎のエネルギーが体中の

全細胞に行き渡るのを感じました。

 

冷えきったレモンティーでも

興奮覚めやらぬまま、

 

私は数メートルおきに星空に向かって

ガッツポーズしながら家路につきました。

 

帰り道はもう寒くありませんでした。

 

心が暖かかったですから。

 

結論から言うとKさんだけでなく、

Aさんの友人はみんな、私がAさんを

好きなことを知っていました。

 

Aさんだけが私の好きな人は、

他にいると思っていたそうです。

 

彼女は友人公認の信じられないほどの

ド天然だったのです。

 

しかし、卒業式の2か月くらい前から、

私のことが気になり始めて、卒業を機に

パーティーで友人たちに打ち明けたそうです。

 

しかし、私が好きなのはAさんですから、

「それアンタのことだよ!」

と真実を知っている友人たちから教えられ、

 

そうなった途端、

声を聴きたくなって電話した、

とのことでした。

 

そして初めての電話から2週間後、

告白されて付き合うことになりました。

 

そこから私の有頂天人生は始まりました。

 

「なんだよ!ただのノロケ話かクソが!」

「アタイはね、他人の恋愛話に興味ないんだよ!」

 

と思いましたか?

 

安心してください(笑)

 

さて、ネタ振りは終わりです

 

ここまでを読んで、いかに私が

Aさんを好きだったかがわかると思います。

 

しかし、結果として私たちは半年後

別れることになります。

 

原因は一言でいえば私の幼さです。

 

私はAさんが大好きでした。

 

付き合えるとも思っていなかった。

 

だからこそ、その半年間は、

私のなかでとても幸せな日々でした。

 

しかし、人間は愚かな生き物です。

 

それに輪をかけて私は愚かでした。

 

幸せが手に入った瞬間、今度は

それを失うことが怖くなったのです。

 

彼女の浮気は疑いませんでしたが、

もともと自信がなかった私は、

 

「もっといい男に言い寄られたら

大好きなAさんをとられちまう」

 

と恐怖を感じていました。

 

遠距離恋愛、環境の変化など

私には不安材料がたくさんありました。

 

私はその不安に押しつぶされ、

いつか彼女を失うときのことを考えると

 

「いつか彼女に振られるくらいなら、

俺の方から別れた方が傷は浅いだろう」

 

と考えるようになりました。

 

彼女の気持ちなんて考えていませんでした。

 

ただ自分が傷つかないことしか

考えていなかったのです。

 

おそらく健全な心をお持ちの方には、

当時の私の心境は理解できないでしょう。

 

今のわたしにも意味不明です。

 

Aさんは何も変わっていません。

 

私をとても大事にしてくれました。

 

誰が見ても彼女は悪くないのです。

 

しかし、私だけが勝手に彼女を失うことを恐れ、

勝手に不安になり、勝手に別れを切り出したのです。

 

私は別れたくないと泣いてくれるAさんを見なければ、

「自分はAさんに大切にされているんだ」

ということを認識できなかったのです。

 

それも一度や二度ではありません。

 

そのたびに私はAさんを泣かせ、

「別れたくない」という言葉を聞かなければ、

愛されているという安心感を得られませんでした。

 

「不良少年が問題を起こすのは

本当は叱ってほしいからだ」

 

という話を聞いたことはありませんか?

 

私は不良少年ではありませんでしたが、

何か似た感覚を今では感じます。

 

高嶺の花だと思っていたAさんが

自分と一緒にいたいと涙を流してくれる・・・

 

私はその状況に安心感だけでなく、

優越感さえ感じていました。

 

私は本当に最低だったんです。

 

彼女を何度も何度も深く傷つけ、

何度も何度も泣かせました。

 

そんな人間に嫌気が差さない人はいません。

 

そして本当の別れがやってきたのです。

 

Aさんは私からの連絡は着信拒否、

メールアドレスも変更していました。

 

当然のことです。

 

しかし、彼女を傷つけた当の本人である私は、

 

「こんなはずじゃなかったのに」

 

という思いだけが残りました。

 

彼女が今まで私のためにしてくれた

たくさんの思いやりのこもった行動。

 

たった数か月でも愛してくれていたこと。

 

そして、それを数か月で終わらせたのは、

私自身であったこと。

 

バカなことに別れてからやっと気づきました。

 

自業自得で本当に恥ずかしい話ですが、

これが私の一つ目の大失恋です。

 

私はこのとき、本当に悔やみました。

 

しかし、同情の余地はありません。

 

何しろ、自分の理想像とも言える女性を、

自分の愚かさのせいで傷つけたのですから。

 

当時はSNSなんてなかったので、

電話も出来ない、メアドも知らないという状況は

もう二度と会えないことを意味していました。

 

それでも私はこう考えることで、

何とか日々の生活を取り戻しました。

 

「また会えるかわからないけど、

もしその時があるなら素直に謝って、

もう一度笑いあえるように頑張ろう」

 

この時はまだ、

十数年後に会えることになるとは、

夢にも思いませんでした。

 

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